明日、陸前高田に出発するので準備中。
すでに3時間がすぎているがまだ終わらない。
もう疲れてきた。
去年の陸前高田のレポートがあったのでのせてみる。
自転車とまったく関係のない某所用のため
説明がくどいけど。
しかしなげーな。
Nさんは、ノリさん。
自転車見つかるといいんだけどねぇ。


「2003南三陸サイクルロードりくぜんたかた」

前日

開催地の陸前高田市は、東京から約500Kmと、かなりはんぱに遠い。
仕事が入らなければ、朝、早めに出発して民宿などに泊まって
レースでもない限り訪れることはないであろう東北の土地を楽しみながら
ゆっくりと準備が進められるはずだった。
まぁ世間はそんなに甘くはなく、仕事をこなしてからの出発に。
よりによって現場が千葉で帰りは渋滞にはまりまくり
練馬の自宅に帰りついたのはすでに9時。
メシ食って、ドタバタと車に機材をを放りこみ出発したのが深夜12時。
近くのスタンドで給油してトリップメーターを0にしてGO。

単独なので淡々と東北道を北上する。
仙台を越えたあたりからがきつかった。
ガムをかみ、カーステ大音量でも1秒間とか気絶したような状態になってしまう。
眠い、眠すぎる。へとへとだ。
しかし、途中で仮眠するのは、そのまま寝過ごしてしまいそうで危険だ。
叫んだり、自分の頬をビンタしたりして歯を食いしばりながら進む。
宮城県に入って雨がぱらついてきた。
一関で高速を降りて下道で陸前高田市にむかう。
時間は5時をまわり、夜が明けてきた。
6時になんとか選手の駐車場に指定されている道の駅にたどり着き
後ろの荷室に潜りこみ、気絶。

当日

興奮しているのか、タイマーが鳴る前に起きる。
1時間位は寝られた。
もう寝られそうもないので、のろのろと起きる。
レース時にある程度消化していなくてはいけないので
おにぎり3個と大福2個を無理やり食べる。
道の駅のトイレで顔を洗い歯を磨くと少しはすっきりした。
ぞくぞくと参加者の車がやって来る。

会場に受付をしに行きたいが雨がやまないので、車で行く。
受付後、そのまま車でコースを下見。
北国なのでワダチや補修跡が多くて、道が悪く、
おまけにそこが深い水溜りになっている。
ここを走ると思うと気が重い。
時間がなく、序盤だけさっと見て道の駅に戻った。

雨が小降りになったので、自転車を組みたてたり、着替えたりして準備を進める。
そうこうしてると、同じチームのNさんがやってきた。
今回の「和田サイクルRC」からのエントリーは自分たちの二人。
Nさんは前日電車入りなので元気はつらつで爽やかだ。
二人でアップのためにそこらを8Km程走る。
召集時間が迫ってきたのでスタート会場へ移動。

小降りだった雨が強くなりだして、スタートまでの時間をアップに使いたかったが
無理なので、会場横の体育館に入り入念にストレッチする。
スタート10分前、外に出るがどしゃ降りだ。
本当はスタート位置に並ばなければいけない時間なんだけど
あまりの強い雨で誰一人ならばない。
3分前、頼むから並んでくれというアナウンスで、皆、意を決して並び出す。
スタートラインに移動しているうちにすでにびしょぬれ。
スタートの場所どりもゼッケンで決まっているので淡々と。
体がどんどん冷えてくる。寒い。
運転やら何やらの疲れでモチベーションが上がらなかったが、
スタートラインに並んで、スタート合図を待つ1分間で一気に
気持ちが高揚してきた。
アドレナリンが体を駆け巡る。
ここまできたら皆、条件は一緒だ。
この天候では気を抜いたらそれで終わりだろう。

このレースは、日本では貴重な公道封鎖のロードレースだ。
自分が最も出てみたかったタイプのレースだ。
日本は自転車文化が浅いので、このてのレースは少ない。
だから、無理をしてでも来たのだ。
序盤に長めの登り、中盤に平地、後半にアップダウンの連続。
距離は45Km。
エントリーした「一般45」はエントリー約100名。

パーン、スタート。
一瞬で寒かったことは忘れた。
ゼッケン番号上スタート位置は後ろから2列目だ。
走り始めて2,3Kmですぐ長めの登りがあるのでそれまでに
前へ上がらないと先頭集団から遅れる可能性が高い。
クリート(靴とペダルを固定する金具)をはめるのにもたつき
メーターをスタートさせるのにも失敗。
団子状態で混沌とした集団のわずかな隙間を縫って少しでも前に上がる。
やる気の有る人は、とにかく前に上がりたいから、
そこらじゅうで怒号が飛び交う。

序盤登り手前でなんとか先頭が見える位置まで上がれた。
集団も少し落ちつく。
集団の中で走る時の車間距離は非常に狭い。
前の自転車の跳ね上げる泥水がもろに顔にかかる。
ホースで泥水を顔にかけられているような感じだ。
コンタクトレンズがずれてしまい前が見ずらくてしょうがない。

序盤の1Km程続く登りに突入。
早い選手は何が強いって登りが強い。
遅れたくない。先頭集団から遅れてはレースの面白みは味わえない。
必死で登る。
睡眠時間1時間と最悪のコンディションで挑んだので
ダメだろうと思っていたのだけど、あれ、けっこう足は回る。
意外と良いペースで登って先頭から10人目くらいで登りきる。
一気に下り。
普段は70Km以上出るらしいけど、雨のせいで皆慎重に下る。
平地に入り集団で進む。
あいかわらず路面最悪、視界も最悪。
ちょっとでも気を許せば即落車だろう。
後ろを振り返ることも出来ず、ボトルの水すらなかなか飲めない。
ビリビリした緊張感が集団をつつむ。
市街地の直角カーブを集団で抜ける。
すぐ前で落車、1人の選手の足に前に倒れた選手の自転車が引っかかって
引きずられている。
すんでの所でかわして、ダッシュで遅れを取り戻す。
カーブのたびに緊張がはしり、「慎重に行こうぜー」とか
「右側に段差ー」とか声が飛び交う。

こんな悪条件でも平地では40km以上で進み、
徐々に集団はリストラが進んでいるようだ。
約50人くらいか。

後半のアップダウン地帯に突入。
ここまでは、コンタクトがとにかくずれて前が見えずに
途中集中力をなくしかけたが、なんとか先頭集団の中で走ってきた。
カーブのたびに落車が起こり、2回位危なかったが生き延びた。
ここからは下見もしておらず、未知の部分。
6,7%の登りを2,300メートル登っては下る。
合間にちょっと平地の繰り返し。

何回か登ってきてかなり集団についていくのがきつくなってくる。
あえぎながら登る。
もう足は乳酸たまりまくり、心臓はぶっ壊れそうだ。
徐々に登りきると集団後方の事が多くなってくる。
集団はさらにリストラが進み約30人。

数回目の登りで左と右で遅れた二人にブロックされた状態になり
ついに集団から遅れる。
必死の思いで下りで踏み倒して集団のケツに追いつく。
そしてまた登り、足を使ってしまっているために、また遅れる。
また下りで踏む、を繰り返すうちに、登りで5人ほどで集団から遅れてしまう。
いわゆる中切れってやつだ。
5人で先頭集団を追うが、ついに見えなくなってしまった。

5人のうち2人が速い。登りも強い。
登りで二人に離される。
限界状態で二人を追うが、あと2メートルがなかなかつまらない。
ケツにつけなければ話にならんので、後先考えずに全力で追う。
沿道には地元の方が応援してくれているのだが
なりふり構わずよだれ鼻水垂れ流しで追う。
なんとかケツにつき、ローテーションに加わって先頭交代する。
自転車で走るのは単独で走るのと、人のケツについて走るのでは
雲泥の差がある。
空気抵抗の差が半端ではないのだ。
先頭は必死で漕いでるのに、後ろは足を止めながら漕げるくらいな感じ。

今は3人でとりあえず前の集団を追う、という目的が一緒なので
3人で協力しながら先頭交代して走ることになる。
その方が単独で走るよりぜったいに速いから。
しかし、この二人は微妙に自分より実力が上のようで
ついていくだけでいっぱいいっぱいだ。
二つほど登りをこなした所で、前を走る一人が「見えた」
「追いついた」とつぶやいた。
前を見ると、おぉ、集団のケツが見えるではないですか。

やった、と思ったのもつかの間、二人が一気にスピードアップした。
うー、ダメだ、切れる。
二人が小さくなっていく。

単独になってしまうととたんにペースが落ちる。
くそー、と思っているうちに後ろから、さっきちぎれた二人が追いついてきた。
歯を食いしばって二人に乗っかる。
その後は、この二人とローテーションしながら走る。
ゴール手前500メートルからローテーション解除。
3人でスプリント勝負だ。
ローテーションしてたときは声を掛け合い協力し合って走っていたのに
今は敵同志、自転車競技の面白いところだ。
一人には勝ったが、一人には1メートル差で負けた。
やぁやぁ、とお互いをたたえあう。

全力をだした。
厳しいレースだったが、良いレースだった。
最高にすがすがしい。
自転車乗りで良かったと思う瞬間。

ゴール後、すぐにボランティアの方たちが駆け寄ってきて
計測チップや、ヘルメットカバーを回収してくれる。
冷たい麦茶を渡してくれて、後ろのポケットにスポーツドリンクと
牛乳を「後で飲んでください」と押しこんでくれる。
素晴らしい対応。

自転車を立てかけて、ヘルメットをとる。
自転車も自分も泥だらけだ。顔もじゃりじゃり。
周りを見ると、皆、泥だらけの笑顔でいい顔している。
気が付くと雨はあがっていた。

結果は107名中の26位。
初中級クラスだったら、入賞にからめたかも。
なんていやらしい考えはやめよう。

その後、Nさんとのんびりと飯を食って帰路につく。
Nさんを一関まで送る。
二人の時は馬鹿話して、げらげら笑いながらなので良かったのだけれど、
別れて高速に乗って30分もたたずに意識モウロウ。
サービスエリアで1時間仮眠。
その後、福島でなんと東北道通行止めに・・・。
2時間半で2Kmしか進まなかった。
ヘロヘロで自宅に帰りつくと、走行距離は24時間で1018Km。
クタクタだが、最高に充実した24時間だった。